Tuesday, June 24, 2014

未知のロシア市場


少しさかのぼるが、今年の4月14日〜19日、
シカゴで毎年行われる全米最大規模のハウスウェアの展示会、IHHS展 で出会ったロシア大手日用品チェーン店との商談のため、ロシアの首都モスクワを訪問。

一般的な日本人のロシアへのイメージといえば、寒い、元社会主義、KGB、アメリカの敵、スナイパー。。。とにかくなんだか解らない怖い謎の国、といったところではないでしょうか。
アメリカからロシアへの入国にあたっては、観光目的であっても航空券の他に、ビザが必要になり、それも超高額。一人約$800。ビジネスの場合は、受け入れ先が発行する招待状は必要で、滞在時の情報を事前に政府のデータベースに登録しておく必要があります。
そういう普通の海外渡航とは全く違う雰囲気の中で不思議な国ロシアへの出張を断行しました。



結論から言えば、そのような心配は無駄、ロシアは私の予想より100倍も「素晴らしい場所」。地下鉄や街中の美しさ(清潔さと、芸術的な側面の両面で)、人々の優しさとお洒落さ、食べ物の美味しさ、今まで世界10カ国ほど旅をしてきましたが、経験上どれをとっても最高レベルと言い切れます!

(↑写真) 地下鉄のどの駅も大変素晴らしく、美術館の建物のよう。


ビジネスという視点からみても、大変魅力的な市場です。それは以下の3点において理由づけられます。

① 猛烈な消費力

Tvoy Dom(ロシアの財閥系DIY日用品点)、Asanフランス系大手スーパー)の現地小売店二店舗を視察しました。
驚くべきは、その商品の多さと、人々のカゴにいれる商品の量です。だだっ広い店内には、天井までのびた棚が所狭しと並びます。その棚には一つの商品カテゴリに対して20以上の種類を揃えていますが、その大半がヨーロッパ、中国からの輸入品です。
そして「ロシアには在庫という考えがまだないのではないか」と疑うほどに、段ボールに入ったままの商品は売り場通路、棚の上下に詰め込まれ、店員達はひたすらそれらの商品の入れ替えを行っていました。卵や牛乳といった商品でさえ、同じような仕組みになっているため、賞味期限が切れて大量に廃棄、となる前に商品自体が流れる(売れる)のであると予想されます。そして客たちは大きなカートいっぱいに商品を入れ、すでに長く伸びたレジへ並ぶのです。この様子から、ロシアの購買力の高さを強く実感することができました。








(↑写真)街には高級外車が走り、店舗はものすごい商品で溢れている。世界中の商品があるが日本製品は本当に少ない。


JETROモスクワ支局でも、ロシア市場の現状を聞くことができたが、彼らの話によるとロシアの逞しい消費力の裏側には、


・所得税率が一定で、可処分所得が総収入の7割
・ソ連からロシアへの変革時に、保有するローンを安く払い終えているため、ロシア人のローン保有額は平均して少ない
・1990年代のハイパーインフレの新しい記憶などによって、ロシア人のロシアンルーブルへの人々の信頼が低いため、貯蓄はほぼせず、消費しモノに変える傾向が強い


・・という背景があるといいます。 ソ連崩壊後の物不足は解消されたとはいえ、欧米のモノの過剰供給状にはまだまだほど遠く、小売店はモノを買ってもらうというより、モノを売ってあげているという意識のほうが強い。それは小売店側の傲慢さなどということではなく、販売効率や効果、ということは気にせず、とにかくたくさんのモノを揃え、モノを切らさないように消費者へ提供し続けるという意識に基づいた、店舗運営やディスプレイに現れているといえます。

② 閉ざされた市場


アメリカのメジャー商品はロシアの小売店店頭ではまず見られません。それは、国際政治情勢、関税の高さ、ビジネス慣習の違い、そして文化理解の未熟さが障壁となっていることは明らかです。
それだけロシアは日本企業、ひいては世界中の企業にとって、攻略困難な閉ざされた市場なのでしょう。しかし、逆に言えばそれは大きなチャンスと捉えられます。競合が少なく、かつ消費意欲の強い市場は、需要縮小が深刻な問題の日本にとって、重要視し注力すべき市場です。
言葉の壁(英語はほぼ通じない、ビジネスの場ではかろうじて、程度)なども含め、超えるべきハードルは大きいですが、現地の有力企業との提携や、輸入サポートサービスを提供する運送会社の活用といった策を最大限活用すれば可能性はあります。難関であるが決して不可能ではなく、難関だからこそチャンスとリターンは大きいのです。
参考
ロシアビジネスの鍵を握るフィンランド


③ 消費者の資質

経済的にはまだ先進国とは言いがたいまでも、ロシアは文化(音楽、芸術、文学)、技術(IT、宇宙)、資源(石油、ガスなど)、知識レベルの高い人材(社会主義時代の無償教育制度による)を持つ極めて良質な基盤であることは疑いが無いでしょう。
良い商品をきちんと評価し、受け入れる器はあるのに、それを満たす商品がまだまだ少ないのが現状。彼らは、日本の品質と性能の優れた商品を待っているのです。


以上のように、食、芸術といった生活的視点からはもちろん、ビジネスの視点からいってもロシアは大変優れたマーケットです。

Mira社も、現在ロシアバイヤーとコミュニケーションを図りながら、ロシア市場攻略に向け、少しずつビジネスを前進させています。どんなビジネスであれ、突き詰めれば、対人と人との交流の中で前進していくもの。文化の全く異なる難関な市場であるからこそ、バイヤーと時間をかけてじっくりと信頼関係を構築し、流れを作ることが新規市場攻略につながります。
今回の出張では、ロシアマーケットについて大いに学び、ネットワーク構築も出来ました。Mira社は、アメリカで完成したインターナショナル・バージョンの日本製品を「世界」へ販売します。


Lily 記 (June,2014)




(↑写真)町並みはパリのように歴史的で雰囲気があり、バイヤーも非常にフレンドリー。日本製品に大きな関心を持ってくれた。

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